脈拍は変わらないのに体温が上がるのはなぜ?
桐島 :
心肺機能を向上させるだけではない、新しい発見が出てきたのですね。
進盟 :
自分自身が気づいたのは、寒い冬の朝にもかかわらず、ドームの中で、自分の手がぽっと赤くなることでした。ドーム内で圧を抜くと空気の温度は下がっていく(※)のに、なぜ手は赤くなり、体はポカポカするのだろうか。これはどういうことだろうかと胸がドキドキしました。何回か稼働させているうちに、この現象は気圧を変化させたときだけに起きるということが分かりました。
※気圧が標高2千メートル級に下がると、室温は4度下がる。
桐島 :
気圧が変化するとなぜ体温が上がったりするのですか。
進盟 :
ふつう、体温が上がる時はエネルギーが消費され、脈拍も上がる。ところがドームの中では脈拍は変わらないまま、体温が上がる。つまりエネルギーを消費しているのではなく、エネルギーを作っているのではないかと思ったのです。脈拍が上がっていないなら、作られたエネルギーは病気を治す方へ回せるかもしれない、と。
これは私の仮説ですが、気圧低下で酸素が薄くなり、細胞が飢餓状態になる。そのとき気圧を戻して酸素濃度が元に戻れば、細胞はワッとばかりに深呼吸するから、充分に取り込まれた豊かな酸素でエネルギーが作られて、体温も上がるのだろうということです。
細胞がエネルギーを蓄えれば“奇跡”も起きる
桐島 :
気圧が低い状態がいいのではなく、気圧が下がったり、元に戻ったりと変化することでエネルギーが生まれるわけですね。
ところで、エネルギーが蓄えられた結果、運動能力が上がった、体が温かくなったという、嬉しい報告が続くうちに、さらに驚異的なことが起こったそうですが、そのエピソードについてお聞かせください。
進盟 :
2005年6月に6人用の小型ドームで営業開始し、2ヵ月間は無料にして、多くの方に試していただくことにしました。ある日、70代後半の女性が訪れました。重篤な病で手術7回、健在なのは乳房だけという女性でした。医師からは、好きにしなさいと言われ、自宅から岩盤浴に通っていたのですが、体力が衰えて通えなくなった。そんなとき近所に減圧ドームがオープンして無料だからと娘さんに連れられて来ました。彼女は安保先生の免疫学を読んで薬剤の弊害を知ったので薬を飲むのは止めて、ドームに通い始めたところ、1ヵ月も経たないうちにご自分で車を運転できるようになりました。医師からは、完治はしていませんが、進行が止まっていると言われたそうです。現在もお元気です。
当時のドームは、まだ進化の途上で、現在のものに比べれば、おそらく3分の1ほどの効果だったと思いますが、この結果には私も驚きました。
桐島 :
そのような逞しいパワーが衰弱していた人の中にみなぎってきたとは驚きですね。丹田で腹式呼吸をする健康法がありますが、それをもっとパワフルに行えるということでしょうか。
進盟 :
根本的には異なると思います。赤血球が運ぶ酸素濃度が大きく違います。腹式呼吸では体温の上昇が見られません。
「命」の燃料となるのは酸素
進盟 :
ドーム内の気圧が下がると、生体防御機能が働いて、薄れていく酸素を精いっぱい取り入れようと血管が太くなり、細胞がフル稼働する状態になる。
そうなってから気圧を元に戻し、酸素濃度を元に 戻せば、飢餓状態だった細胞は勢いよく酸素を取り込みます。すべて、細胞の本能にお任せです。
さまざまな本を調べて、この仕組みを裏付けるひとつの化学式にたどりつきました。
ATP生成の反応式です。つまり、好気呼吸の研究によると、細胞の中では、「栄養の基本であるブドウ糖」と「水」と「酸素」が反応すると、熱が生まれ、エネルギー(ATP=アデノシン三リン酸)が生み出される仕組みになっています。
この数式では、「解糖系:2(ブドウ糖の分解)」+「クエン酸回路:2(解糖系+水)」+「電子伝達系:34(解糖系+クエン酸回路+酸素)」となっており、「酸素」が最も多く必要とされます。酸素が加わることで一挙に「38」のレベルに達して、ぱっと火が点くように熱が生み出されるわけです。
もともと酸素は生きものにとっては毒でしたが、酸素を取り入れるとエネルギーがバァっと増えるから、これを活用しない手はない、と細胞は学習して進化をしてきたのです。
桐島 :
このドーム内の気圧変化はどのくらいなのですか。
進盟 :
平地から標高2千メートル級の気圧になるまで下げます。2千メートル級の気圧というのは旅客機の機内と同じです。50分間にこれを数回繰り返します。当初は「減圧」と呼んでいましたが、今は「調圧」と呼んでいます。この気圧の上下によって、エネルギー(ATP)が細胞の中に蓄えられます。
桐島 :
ATPというエネルギーの貯金はどのくらいもつものなのでしょうか。
進盟 :
個人差はあると思いますが、おそらく2〜3日はもつと思います。調圧ルームはエネルギーの給油所と考えてください。



