
美人は腹黒い、その理由。
前号『とかく美人は腹黒い』で、腹黒さの理由は、内臓の汚れを気にしないからと書いた。その後、何度も「腹黒い」血液を見る機会があった。よくよく注意して彼らにライフスタイルやら食事、嗜好品を尋ねた結果、「美人はなにゆえに腹黒いのか」についての、私なりの結論を得たので、報告させていただく。
美人はなぜ腹黒くなるのか? それは「糖分の過剰」にほかならないというのが、私なりの結論(それに「悪い油が加勢する」)。意外に単純な結論で拍子抜けしてしまうが、糖分のとりすぎが、「からだ」にとっては想像以上に、相当深刻な事態を招いている。砂糖の消費量とガンの増加のグラフが一致しているといったのは、今は亡き今村光一氏(マクガバン報告をはじめ代替療法の日本への最初の紹介者)だが、この指摘は、今でも、またこれからも有効だ。
「以前は甘いものなんて欲しがらなかったのに、このごろ食べるようになった」という老人。また「タバコをやめて甘いものに変えた」男性とか、「お酒は飲まない。甘いものは大好き」という女性は多い。こういう話には、「ほほえましい」とか「よかったね」とか、少なくとも「害はない」という印象で終わるのだが、それが落とし穴だと、私などには思われる。
どうも、日本の社会では、甘いものが好きな人に悪い人はいない、という無意識の了解があるのではないだろうか。(からだには悪いはずの)タバコよりはお菓子のほうがいいに「決まっている」。酒飲みより、饅頭でお茶をのんでいる夫のほうが、天下泰平である。歳をとったら、甘いものくらいは食べさせないとかわいそうだ、などなど…。
こんな「最後に出てくるいいヤツ」みたいなイメージが、甘いものにはまとわりついている。「砂糖は脳の栄養」という殺し文句。これは、砂糖会社が仕掛けたものすごいポジティブ・イメージだと思う。日本人は「脳」とか「頭」とかいうことばに敏感で、この宣伝をきっかけに甘いものを取り始めたという話を耳にする。『唯脳論』の著者が『バカの壁』で大当たりするようなものである。
病人へのお見舞いに、お菓子が選ばれるのも同じ理由(幸せイメージ)からだろう。まず「お見舞いのケーキをもってきた私は、病気で不幸なあなたをとても心配する善い人」で、「甘いものは、不幸で貧しい気分を魔法みたいに消してくれる」という、わけの分からぬ強要とともに、「ケーキを食べて、みんな幸せな国の住人になりましょう」というストーリーが展開する。
ここには、甘さを解禁する、日本の正月や彼岸や節句という「ハレの日」の幸せイメージに、西洋の「パンと蜜の流れる国」「天国」のイメージまでが重なっている。だから「甘いもの」には、常に、幸せや豊かさ、そして上品さをも確認させたり押し付けたりする、不思議な力が宿っている。誰もがハッピーでなければいけない時代に、甘くておいしいお菓子は不可欠だ。その結果、老いも若きも糖尿病予備軍や低血糖症になっていく現実は、見てみないふりをする。
しかし、生物のもともとからの発生と進化を追及している三木成夫博士はさすがに、「お菓子は毒だ」という趣旨のことを書いている。
「野性のサルが、見物人の手から菓子を貰うようになると、かなり短い期間に、虫歯と歯槽膿漏が現れるという。菓子とは澱粉、卵黄、砂糖の3大要素から構成される。…砂糖は本来、小腸の管腔内で初めてつくられるものであって、それよりも手前の腸管部に対しては、不自然な、むしろ毒物として作用しても不思議でない物質である」。(『生命形態の自然誌』うぶすな書院)三木博士はここで、野生と文化の葛藤について述べ、文化は栄養のたまりをからだの内と外につくりあげていった、しかも料理という名のもとに切断、粉砕、圧搾、攪拌、煮られ、炒められ、焙られ、電子で加熱され、化学的、生物学的に分解され、ついに「即席保存栄養」の製造にまで至ったことをあげている。澱粉、卵黄、砂糖からなるお菓子は、その即席栄養の最たるものである。ごはんがわりにお菓子を食べる若者どころか、お年寄りすらいるのが現代である。そこで、わたしの顕微鏡による血液観察から、この三木博士の「砂糖は毒物」をフォローするとつぎのようになる。
(1)砂糖のべたべたする粘着成分のために、赤血球が蜂の巣状にくっついてしまう。
(2)流れをとめられた赤血球は停滞し、それぞれが窒息して崩壊してしまう。
(3)崩壊した赤血球に微生物が寄生し始める。
以上の作用に加え、糖分の過剰は中性脂肪を増加させ、コレステロールをつくりあげる。このコレステロールが「血栓物質」(サイレント・クロッツ)のひとつとなり、腸管へ蓄積される。このことは即ち、動脈硬化であり、いわゆる微小循環障害(ドロドロ血液)を招くものである。腸管へのためこみは、重力の及ぶため必然的にいちばん下部(大腸)から始まり、次第に腸管の上部に拡張していくこととなる。
血液の流れが停滞し、炎症によるフィブリンが蔓延する、加工食品の添加物がコレステロールとは別の「血栓物質」をつくり、ますます血流が障害される。これらが「腹黒さ」に移行する理由である。美人だけが腹黒くなるわけではないが、美人は見た目からはじまりライフスタイルすべてに「幸せイメージ」を迫られる結果、自他双方の期待通り「美人に」かつ「腹黒く」なっていくのである。甘いものが幸せと豊かさの象徴なればこそ。美しさが滅びの象徴へと転じていくのである。
阿部孝次
中央大学法学部卒。ジャーナリスト。
日米の代替医療、東洋医学、民間療法を取材。主な著書に、カッピング療法の原理と血液観察を解いた『バンキー療法を知っていますか?』(健康医学総合研究所刊)、翻訳と解説を担当した『沈黙の血栓』(中央アート出版社刊)、訳書として『決定版ゲルソンがん食事療法』(徳間書店刊)がある。
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